【過去記事転載】コースワークマクロ編

 

ついにPenn Stateでも授業が始まりました.今学期の授業についてはもう少し様子を見てから書き始めるとして,いつまで経っても書いていなかったマクロ経済学について書いていきたいと思います.

  • 授業

Penn Stateではマクロのコースワークが(なぜか)春学期(つまり後期)に固まっていて,一週間に4コマというかなり濃密なスケジュールで進んでいきます.前半と後半では担当する教員が異なり,前半では主にOLGモデルや動的計画法とその応用,後半ではDSGEモデルとNew Keynesianモデルを学びます.

具体的に前半は,

    • 二期間の効用最大化問題
    • 実物OLGモデル
    • 貨幣を組み込んだOLGモデル
    • Lucasのisland-economyモデル
    • 動的計画法(DP)
    • 最適成長モデル
    • 消費のモデル
    • 耐久財のモデル
    • 投資のモデル

を学び,後半には

    • 恒常所得モデル
    • Arrow-Debreu経済
    • Asset Pricing
    • 線形合理的期待均衡モデルの解について
    • RBCモデル
    • New Classical dichotomyモデル
    • New Keynesianモデル
    • 最適金融政策
    • 財政政策

を学びました.

二期間の効用最大化問題はイントロダクションのようなものでマイクロかマクロの授業で学んだことのある内容だと思います.OLGについては教員の講義ノートを用いてShell, Gale, Diamondのモデル,その後貨幣を組み込んだモデルの中で貨幣が価値を持つ均衡が存在することを学びました.またその際に貨幣の中立性(貨幣供給量が実物変数に影響を与えないこと)が成り立つ場合と成り立たない場合,後者の有名な例としてLucas(1972) JETのモデルで合理的期待均衡において貨幣が中立でなくなるようなモデルについて学びました.

その後はDPの簡単な例による導入からいくつかの理論的な結果(縮小写像定理による解の存在証明など),その応用として最適成長モデルとその分権化が解説されました.以後は有名なHallやHansen-Singletonによるモデルとその実証研究について学びました.最後に景気循環を引き起こす原因となる耐久財や投資のモデルについて学んだのが前半部分でした.

OLGの部分については教員の講義ノートと同様の内容を取り扱ったテキストが私の知る限りないのでご紹介できないのですが(Real OLGについてはAcemogluのテキストなどが,OLG with money についてはNeil Wallaceの解説が参考になると思います),DP以降の部分についてはAdda and Cooperのテキストの内容とほぼ対応しています.授業ではこのテキストと同様,理論モデルだけでなく実証研究の結果や推定方法についてもカバーしていました.

後半はスタンダードな内容で,Asset PricingまではLjungqvist and Sargentのテキストの内容を学びました(具体的には第3版では恒常所得モデルは2.11節,Arrow-Debrue経済は第8章の8.7節まで,Asset pricingは13・14章です).その後Blanchard and Kahnによる線形合理的期待均衡の解の存在についての定理とDynareによる数値計算の方法を学びました.RBCモデルについてはKing and RebeloによるHandbook of Macroeconomicsのサーベイがテキストになっていましたが,対数線形近似を新たに学ぶこと以外は通常のoptimal growth modelとほぼ同じモデルなので,RBCモデルの意義やデータとのフィットについての解説が授業でのメインでした.金融政策のモデルについてはWalshの”Monetary Theory and Policy”がテキストになっていましたがNew Classical dichotomyモデルはGaliのテキストの第二章のモデルが用いられていました.また最適金融政策についても授業ではWalshが用いられていましたがGaliのテキストの方が丁寧に説明されているので適宜Galiを参照するのがよいと思います(New Keynesianモデル自体の説明はWalshの方がわかりやすいと思います).最後にWalshの第四章の内容である財政政策について学び,コースワークのマクロは終わりました.

マクロのCandidacy examはマイクロと違い選択問題なしの5問が出題されます.今年は特に前半の教員が初めて担当し,後半の教員の作成した過去問も1年分しかなく,非常に対策のしづらい年でした.前半部分については私自身はいろいろな問題を解いたりしたのですが,試験問題を見た上では結局講義ノートの内容をしっかりと理解する以外に対策法はなさそうな問題だと思いました.

後半についてはテキストが用意されていることもあり比較的対策はしやすかったです.Ljungqvist and Sargentの内容の部分についてはテキストの練習問題のいくつかを解き,またNew KeynesianモデルについてもWalsh,Gali両テキストの練習問題の中から試験範囲内の問題をすべて解きました.特にWalshの練習問題は本文の内容を理解していれば簡単に解ける程度の問題なので自学自習もしやすいと思います.

余談ですがマクロは担当教員によってカバーする内容が変わることで有名な分野です.Penn Stateの場合もそうで,去年の前半部分はStokey and Lucas with Prescottのテキストの内容を忠実に扱っていたようです.なので試験対策の際にはどのような分野が試験範囲になっているかという情報が非常に大事です.

  • 参考文献とテキスト

Shell (1971), “Notes on the Economics of Infinity,” Journal of Political Economy
Gale (1973), “Pure Exchange Equilibrium of Dynamic Economic Models,” Journal of Economic Theory
Diamond (1965), “National Debt in a Neoclassical Growth Model,” American Economic Review
Lucas (1972), “Expectations and the Neutrality of Money,” Journal of Economic Theory
Blanchard and Kahn (1980), “The Solution of Linear Difference Models Under Rational Expectations,” Econometrica
King and Rebelo (1999), “Resuscitating Real Business Cycles,” Handbook of Macroeconomics

 

Recursive Macroeconomic Theory, Third ed.

Dynamic Economics: Quantitative Methods and Applications

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