【過去記事転載】コースワーク振り返り(対策編 秋学期)

前回は備忘録代わりにとコースワークの大体の内容を書きましたが,これからいくつかの日記に分けて,授業の詳細な内容と有用な(と私が考える)勉強方法やテキストについて書きたいと思います.

一応Penn Stateのコースワークを念頭に置いてはいますが,Penn Stateのカリキュラムは(一部を除いて)標準的なものだと思いますので,他の大学(日本含む)でコースワークを受ける方にも有用だと思います.

経済数学

距離空間の位相,点列の収束,関数の連続性,若干の関数解析,微分,線形代数,最適化などが範囲で,教員が定理をまとめた講義ノートを配布して授業で丁寧に証明していく,というスタイルでした.宿題のレベルは数学書の練習問題の中でやや簡単な問題,というくらいのものでした.標準的な内容なので対策にはどのようなテキストを使っても構わないと思いますし,以下では一般的にどのように数学を勉強したらよいかを書いていきます.

経済学部出身の方だと経済数学のテキストを参考にされる方も多いとは思いますが,個人的には経済数学のテキストでは「どの数学の知識が必要なのか,そして数学がどのように経済学で使われているのか」を見るにとどめ,数学自体は専門の数学書で勉強したほうが数学の思考法に慣れることができてよいと思います.中でも個人的には杉浦光夫『解析入門』を推したいところです.証明に論理の飛躍がなく,厳密な議論とは何かを知るためのお手本のようなテキストだと思います.

洋書ではWalter Rudin, “Principles of Mathematical Analysis”がよいと思います.距離空間の位相の解説も詳しいのでPenn Stateのカリキュラムにも合っています.Rudinの本は定義が標準的なものと少し違ったり(もちろん標準的な定義と同値です)とクセがありますが,証明が上手く出来ており,杉浦解析と補完的です.杉浦解析かRudinのどちらかの本を選んで,練習問題も解いていけばコースワークの数学ではお釣りがくるぐらいでしょう(Penn Stateでの授業で,完備距離空間に関する議論の一部はこれらのテキストではカバーされていませんでした.その部分はDavid Luenberger, “Optimization by Vector Space Methods”が参考になりました).

しかしこれらの数学書の練習問題は通常かなり難しいので,経済学専攻の学生がいきなり解くのはかなり大変だと思います.John Stachurski, “Economic Dynamics: Theory and Computation”は動学マクロの理論と数値計算を解説したテキストですが,始めの数章とAppendixで解析を扱っています.この本の練習問題は適度に易しいので,そもそも証明をすることに慣れていない方にはよい練習になると思います.

線形代数については恥ずかしながらみなさんにお勧めできるほど多くの本を知りませんが,私は斎藤正彦『線形代数入門』で勉強しました.行列と線形写像との対応関係などがきちんと説明されており,その点が気に入っています.

最適化についても同様で私は授業のノートを参考にして勉強しました(本当はLuenbergerで勉強したかったのですが,間に合いませんでした).いちおう授業では,Rangarajan Sundaram, “A First Course in Optimization Theory”が参考文献になっていました.

ミクロ経済学(秋学期)

Vijayの好みで顕示選好から授業がスタートしたりという部分はありましたが,それ以外は標準的でした.Mas-Colell, Whinston and Green, “Microeconomic Theory”でいうと,1-5,15-17,19章の内容が該当します.一般均衡論についてはエッジワースボックスや純粋交換経済における厚生経済学の基本定理,均衡の存在証明,そして不確実性下の一般均衡分析(risk-sharingやHirshleifer effectなどが授業ないし宿題で出ました)のトピックを扱いました.

また均衡の存在証明に対してはMWGのアプローチとは異なり,一般均衡を一般化ゲーム(generalized game)として定義しなおし,ナッシュ均衡の存在証明を用いて一般均衡の存在証明を導くというVijayオリジナルの証明方法をとっていました.この証明はDavid Kreps, “Microeconomic Foundations I: Choice and Competitive Markets”に載っています.

どこのミクロの授業でもそうだと思いますが,MWGを何度も読み練習問題を解いてその内容を理解する以外に方法はないと思います.一つ注意する点としてはMWGの数学的記述に惑わされてミクロ経済学の定理を「純粋な数学的問題」として考えてしまわないように,というところでしょうか.論証方法として数学を用いてはいますがMWGは純然たる経済学のテキストであり,MWGで大事なのは定理のstatementや証明の前後にある経済学的意味の部分を理解することです.練習問題を解いたときも解けたことに大喜びする前に自分の解いた問題が経済学的にどのような意味を持つのか,自分は問題を解く中で何をやったのか,ということを理解することが重要です.その点をしっかり意識して勉強していけば,見たことのない問題が試験で出たときも,その問題の経済学的な意味を考えて自ずと解法が思い浮かぶようになってきます.

計量経済学(秋学期)

測度論的確率論に始まり,漸近論に終わります.確率論については積率母関数,大数の法則,中心極限定理,あと確率収束に関するいくつかの定理が範囲でした.
教員の作成した講義ノートに沿って授業が行われていましたが,定義の仕方やトピックの順番などはDavid Williams, “Probability with Martingales”に近かったと思います.このテキストは実際に教員も参考文献に挙げていました(同時にPatrick Billingsley, “Probability and Measure”も挙げられていましたが,こちらは授業に合わせて読むには量が多すぎると思います).

Williamsか授業で内容が理解できるならそれでよいと思いますが,それで少し苦しいと思うのなら,測度論についてはRene Schilling, “Measures, Integrals, and Martingales”がお勧めです.説明がわかりやすく,また測度の拡張の一意性や拡張定理の証明の仕方がスマートです.練習問題も多いのでよい練習になります(Williamsは練習問題が厳選されているのですが,逆を返せば量が少ないので).

他に確率論のテキストとしてRick Durrett, “Probability: Theory and Examples”は具体例も多く個人的には気に入っています.特に条件付き期待値の解説は非常によく書けていると思います.大数の法則の章辺りから練習問題が難しくなってくるのがネックでしょうか.またErhan Cinlar, “Probability and Stochastics”は書き方が他のテキストと少し違うのでメインテキストにはしづらいかも知れませんが,解説が面白いので一見の価値ありです.

漸近論パートについては授業の内容がvan der Vaart, “Asymptotic Statistics”の2章の内容に非常に近いことを,授業の後になってから気づきました(残念).

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