ゲーム理論の講義ノート

結構頑張って作ってるのに授業用ウェブサイトに置いているだけではあまり読まれることもなさそうなので,授業で作った資料の中で公開することに多少の価値がありそうなものについては定期的にこちらで公開してみることにします.

授業に関するよりup-to-dateな情報や資料は私のteaching関係websiteをご覧ください.

 

Advanced Microeconomics II の講義ノート(英語)(2019/12/04掲載)

西南財経大学の大学院向けのミクロ経済学の授業でゲーム理論を教えるにあたって作成した講義資料です(授業ではノートのメインな部分はほとんどカバーしていますが,いくつかの理論的なトピックはスキップしています).理論研究自体というよりも,実証・応用研究の研究者になることを目指す学生にどのように動機づけを与えるか,そして「理論の人たちの興味」がどのように応用に結びついているかをなんとか説明したいと思って書いていて,こまめに改定しています.時々めんどくさがって授業で話した内容で反映されてない記述(図など)があるのはご容赦ください.少しずつcompleteにしていきます.

ノート後半の数学付録はDudleyのReal Analysis and Probabilityを元にいくつか議論を補ったり,経済学で使うトピックを盛り込んで作っています.分量が増えれば数学ノートは独立したノートにするかもしれません.

人民元の外貨(特に日本円)への替え方

中国で働いていると,もちろん多くの場合人民元でお給料を頂くわけですが,資本規制があるため帰省や出張などで国外に出るときにどうやって外貨に替えるかという問題が生じます.

将来中国で働く可能性を考えている方々が一定の覚悟心の準備ができるように,自分が試したことのある方法をいくつかご紹介します.当たり前ですが,いずれも合法です.

注意:特に現地での銀行を通した手続きをする場合にそうですが,ルールが非常に頻繁に変わりますし,あと多分いろんなローカルルールがあります.具体的にどんな書類を集め,どの手続が認められているかはその場の担当者に聞くのが間違いないと思います.

ちなみに,銀聯カードをデビットカードとして決済に使う方法もありますが,まだまだ対応店舗が少ないので現状ではあまり現実的な方法ではないと思います(観光客の多い街の東急ハンズやロフト,ドン・キホーテ,大型家電量販店,薬局などは銀聯カードに対応しています).

 

1.銀聯カードを使って海外のATMから直接引き出す

このやり方が圧倒的に楽です.例えば日本に到着してから日本のATMで海外の銀行カードに対応したもの(セブン銀行ATMがおすすめ)に銀聯カードを入れ,操作すれば日本円で中国の銀行口座から直接現金を引き出せます.

日本のATMだと一日あたり10万円まで引き出すことができ(セブン銀行ATMの場合.他の銀行のATMの場合はもう少し低い限度額が設定されているそうです),個人で年間10万元相当(大体150-160万円くらい)まで引き出すことができます.

年間引き出し限度額についてはそれを越えた場合はATMのほうでエラーが出るそうですが,なにかの間違いで限度額以上引き出してしまった場合,その年とその翌年に海外で銀聯カードでの引き出しができなくなってしまう罰則があるので,累計引き出し額をメモしながら計画的に引き出していくのがいいと思います(以前は年間引き出し限度額はカードごとに設定されていたようですが,2018年からは限度額は個人に紐付けられるようになりました).

 

2.現金を持ち出して海外で交換する

物理的には一番シンプルで,大きな額でなければこの方法でも良いかもしれません(国外へ持ち出せる額に制限があるのでご注意ください).個人的にはあまり頻繁には使っていません.

 

3.銀行で外貨を購入し,国際送金する

マネーロンダリング対策で外国人は就業許可を取って納税している場合に元の外貨への交換ができます.その場合,銀行のカウンターで所定の書類を提出した場合に限り外貨の購入ができます.国際送金自体はオンラインバンキングでもできるようなのですが,外貨の購入だけは銀行に直接出向く必要があります.私の場合,必要だった書類は

  1. 就業許可
  2. パスポート
  3. 納税証明書
  4. 職場からの給与支給証明
  5. 職場との雇用契約書

でした.

1.就業許可と2.パスポート,5.職場との雇用契約書については問題ないと思います.

3.納税証明書については職場所在地の税務署に行けば発行してくれます.4.職場からの給与支給証明書については職場の経理からの印章が必要なのが注意です.また,書類によって出所が確認された給料を使って外貨を購入するというかたちになるため,納税証明書と給与支給証明書は同時期の収入を記載したものである必要もあります(ちなみに,その論理で行くなら購入可能な外貨の額にも制限が出てきそうな気がしますが,その点についてはまだ確認できていません.いずれにせよ給料以上の額を一度に購入するのは現実的ではありませんし).

 

国際送金については他の国で行う場合と同様なようです.送金手数料はだいたい3,000円ちょっとくらいでしたが,HSBCの場合はプレミアムアカウントに契約すると送金手数料が無料になるそうなので,個人的にはそちらに移行することを考え中です.

 

成都での生活(日常生活)

暮らし向き

中国で生活している日本人(少なくとも研究者)が比較的少ないということもあって,暮らし向きについて質問を受けることもあります.ざっくり言いますと,「(言語の問題を抜きにすれば)日本で生活するのと同程度には快適だし,何ならアメリカよりも食事や日本製品へのアクセスの点でより快適」という感じです.

 

言語の問題

とは言っても言語の問題が中国で生活する上では非常に大きい障壁です.部局内では英語を使って仕事ができると言っても(それでも大学レベルの事務作業では中国語が必要),学外で生活する上では中国語は必須です(これまで生活していて一定以上英語を話せる人に会ったのは外資系ホテルの従業員やアップルストアの店員くらいです).常に誰かに助けを求めるなら別ですが,それが面倒ならある程度勉強してから中国生活をスタートさせるのがいいと思います(例えば,日本人なら数ヶ月勉強したらHSK4級くらいは割と簡単に取れます)

おぼつかない中国語でも外国人が頑張って話しているとわかると優しく笑って接してくれるので,案外なんとかなります.

 

生活費(大体1元=15円くらいで換算しています)

物価が上がっているとは言え,他の先進国と比べればまだまだ物価は低く,体感的には日本の1/3~1/2,アメリカやオーストラリアの1/5~1/4くらいです.もう少し詳しく言えば,生活必需品や交通機関の物価が日本の1/5くらいで,住居が都市によって日本の大都市より少し安め~東京以上の高さ,(一定以上の質の)服飾品やその他輸入品が日本と同じか少し高いくらいです.全体的に安いけど,輸入品や贅沢品,そして高水準の教育と医療が高額,という感じでしょうか.

実際の生活としては,服飾品や輸入品の消費を抑えて(僕は帰国時に日本で買ってます)食事も中華料理を食べるようにすれば日本ほどお金がかからず生活できるという感じです.また成都はまだまだ地価が低く,比較的都心部に近いマンションでも日本より安く借りられます.

実際の自分の生活費でいうと,

住居←都心に近いほうのキャンパスから徒歩10分程度,徒歩5分圏内に地下鉄駅,スタバ,コンビニ,スーパーのある1LDK(トイレは洋式)で月4万円ちょっと(2,700元).ちなみに,空港まで地下鉄で30分くらいで行けるので超便利です(自慢)

光熱費←空調をつけない月は一ヶ月で450円くらい(30元くらい).空調が結構掛かり,特に冬場に暖房をつけっぱなしにしていたら月5,000円くらいになってしまいました(今年はストーブを買って対策してみる).ガス代は多分月200~300円くらいかなと思います.水道代も月数百円くらいで,総じて非常に安いです.

その他の生活費←ほとんど食費ですが,割と贅沢しても月 4.5万円(3,000元)ぐらいで収まると思います.

食費の参考:学食一食分10-20元,庶民的なレストラン10-30元,デリバリーで夕食20-50元,お高いレストランで100-200元くらいです.あと肉まんは2元とか.

 

その他

-成都には伊勢丹やイトーヨーカドーがあるので,つらくなった時や日本のものがほしくなったときは避難できます.とんかつ屋さんとかカプチョ,ココイチとかが大体日本と同じくらい(か少し高め?)で食べれます.日系の美容室も伊勢丹にあります.

成都での生活(研究・教育関係)

研究環境

teaching loadがかなり緩め(週2.5hの授業を年間3つ)なのと,比較的個人研究費(6年間で150万円くらい)や渡航費(年間で国内出張15万円 AND 海外出張30万円ほど)を出してくれるので,研究の条件としてはなかなか悪くないのではないかと思います.

定期的なセミナーとしてはほぼ毎週部局主催のセミナーシリーズとランチタイムを使ったbrownbag seminarが開かれています.体感的には9割ぐらいが中国の他の大学の研究者による発表で,ときどき国外の研究者も訪問する,というところです.

分野の偏りとしては実証研究の研究者及び院生が多く,特にその分野を研究している人にとってはpeer effectも期待できる環境なのではないかと思います(理論の研究者は割と少なめです)

 

教育環境(学部教育)

今のところ自分自身は新入生選抜のための英語面接と学部4回生向けの金融論の授業,そして数人の卒論指導を経験したところですが,全体的な印象としては学部生の質は京大の学生と十分comparableなレベルだと思います.もう少し具体的に言うと,学術的なものへの興味や数理能力は京大生,語学力は(かなり大差をつけて)RIEMの学生に軍配が上がるのではないかと思います(個人の感想です).特に卒論発表では「これ,publishableじゃないか…?」という研究をする学生もいて,危機感を覚えたりしました.

残りの印象としては

-教員を敬う文化があるおかげかすごく恭しく接してくれるので,逆にこっちが戸惑う(外国人教員ということで,向こうも接し方を探っているのかも)

-授業ではほとんど質問は来ません(授業中の質問は99%留学生から.授業後に質問に来ることはあります)

-留学生はパキスタンなど南アジア,アフリカ,大陸ヨーロッパからの学生が多いようです

 

教育環境(大学院教育)

大学院ではPhD1年生向けのミクロ経済学(そしてcomprehensive examの作成),そして2年生向けの産業組織論,ミクロ経済理論(というコース名)の授業を担当しています.修士・博士学生の指導はしたことがありません(そもそも理論専攻の院生がいないので).

学部教育と同じく,授業はすべて英語で行われており,留学生も何人かいます.諸々の事情で実証研究をする院生しかいないので,僕の授業では(最低限学んでおくべき内容はカバーした上で)より応用を意識して教材を考えています.

 

成都での生活(まずは大学の紹介から…)

しばらく,不定期ですがこちらでの生活上のことなどをつらつらと書きまして,何年も放置しているブログ書きのリハビリとしようかと思います.

 

私の所属先について大まかに.

西南財経大学は四川省の成都にある経済系大学で,いわゆる「西部」では有名な大学の一つです(先日のUS Newsのランキングで中国国内の経済学ランキング10位に入りました).この大学,特に私の所属する経済与管理研究院(以下RIEM)は中国でも早くから海外PhDを登用した経済学部の近代化を導入したことで有名(他にも有名なのは厦門大学とか)で,現在50名ほどいる教員全員が中国国外(アメリカやヨーロッパ,シンガポールなど)で学位を取得しています.後にも触れますが,RIEM内では英語も公用語になっています(というか僕は英語使えないと困るので).

日本の大学で言うとどこかと言われるとちょっと難しいのですが,経済系メインの大学であり,また中央(北京や上海)から離れているがその専攻では知られた大学ってことで,小樽商科大学とかに近いのじゃないかなと勝手に思ったりしてます.

RIEMの大学内での立場としてはおそらく日本の付属研究所(京大の経済研究所や阪大の社研など)に近く,経済学部とは別組織として運営されています.とはいえ,学生教育のためのプログラムも(段階的に)整備されており,学部課程と博士課程で教育を提供しています.

学部課程では,新学年が始まったとき(9月)に全学の大学一回生に向けて募集を行い,学科試験,英語での面接試験を課した上で学生を選抜し(ちなみに,これは国内の学生の場合で,留学生は別に選抜します),すべて英語で(英語のテキストを使い,英語で授業し,また学生のグループ研究発表,卒論の口頭試問も英語で行います)4年間教育します.その後卒業生の多くが海外留学など,ぐろーばるに活躍しているそうです.

博士課程のシステムとしてはおそらく他国の大学と近いと思います.1年目はコースワークと,いわゆるcomprehensive examを課し,それを突破した院生はフィールドコースを受けながら論文執筆をします.一応4年間のプログラム(これは他国と比べ短い)ですが,大体5−6年かける院生が多いようです.

 

また何かあれば加筆します.

 

 

 

 

 

過去記事転載まとめページ

以前のブログに載せていた記事で,当時の授業内容など多少役に立ちそうなものを転載していきます.アメリカPenn Stateでの博士課程中に書いたもので,当時の状況を知るという点においては多少は役に立つかなと思います.ちなみに現時点でも私の時代からコースワークやプレリムの内容がかなり変わっているので,これからPenn Stateに来る予定の方に役立つ情報ではなくなっている可能性が高いです(例えば,現在はプレリムで計量経済学の試験が導入されているはずです)

【過去記事転載】1年目コースワークを終えての感想(プレリム除く)

【過去記事転載】コースワーク振り返り(対策編 秋学期)

【過去記事転載】コースワーク振り返り(対策編 春学期ミクロ)

【過去記事転載】Candidacy Exam(マイクロ編)

【過去記事転載】コースワークマクロ編

【過去記事転載】今期の授業

【過去記事転載】Rationalizabilityと不完備情報ゲームに関する文献まとめ

 

【過去記事転載】2013年秋学期の授業【過去記事転載】研究に行くまでの勉強の仕方のまとめ

【過去記事転載】研究に行くまでの勉強の仕方のまとめ

以前Ask.fmでご要望を受けたので,学部から大学院までの経済学の勉強についてのロードマップ?というものをまとめてみたいと思います.
と言っても自分が辿ってきた道やそれに近いものしか(例えできたとしても)指し示すことはできないと思うので上にある通りのエントリになったわけです.
経済学部に入ってから大学院のコースワークまでで有用そうなテキスト,そして気をつけるとよいと思うことについて,思いつく限り並べてみようかなと思います.

  • まずはじめに

大学に入るまでに勉強しているであろう高校範囲の内容についてはすでに身につけているものとします(でないと収拾がつかなくなるので).
差し当たって数学では数学II・Bで微分積分までが出来ればよいかなと思います(確率など他のトピックはテキストを見ながら勉強できるかなと思います).

あと,私の知っている範囲で適宜テキストを挙げていますが,それはそれらのテキストが比較的みんなに使われていたり自分の好みだったりといった理由で挙げているだけなので,同レベル帯の他のテキストを参照すれば構わないと思います.また参考書として読むと楽しいテキストもたくさんあります.あくまで参考程度にご利用ください(以下ではキリがないのでこの手の「留保条件」を書いてないこともあります).

  • 学部の勉強

まずは経済学特有の考え方に慣れることが重要です.演習問題もどんどん解いていきましょう.

  • ミクロ経済学

日本語の良書がたくさんあるので,定番のもので自分が読みやすいと思ったものを選んでおけば間違いがないと思いますが,個人的に一番最初に読む本としてお薦めするのが

 

ミクロ経済理論 (有斐閣アルマ)

 

です.この本は巻末の数学附論の解説が直観的でわかりやすいので非常にお薦めです.学部の経済学に必要な程度の数学は基本的にはこの数学附論の内容で十分だと思います.

ただこの本は練習問題は少ないので

演習ミクロ経済学 (演習新経済学ライブラリ (1))

 

を使うとよいと思います.

もっと本格的に勉強したい,または院試対策をしたい方には
ミクロ経済学

ミクロ経済学演習
がお薦めです.この本のサイトに双対性に関する補足ノートもあります.
https://sites.google.com/site/okunomicroeconomics/textbook
一般均衡論からゲーム論に至るまで,この本と演習書の内容を網羅できたら学部のミクロとしては十分すぎるぐらいでしょう.

  • マクロ経済学

定番のテキストでお好きなのを.うちの大学はBlanchardのマクロ経済学が指定テキストでした.他の本がどのような構成になっているかはわかりませんが,試験対策に章末の練習問題を解いておけばよいと思います.

…と適当に書きましたが,それでもまじめにやりたい方は以下のテキストを熟読しましょう.
マクロ経済学 (New Liberal Arts Selection)

 

統計の話に多くのページが割かれているのが素晴らしいところです.後半の発展的なトピックについては院のテキストを読むかどうかお好みで.

院試対策には

マクロ経済学

がよいでしょう.特に阪大の院試を受ける場合にはこれ以外によい対策のテキストがないと思います.
また京大のようにたまに連続時間のSolowモデルが出題される場合には
Advanced Macroeconomics (The Mcgraw-Hill Series in Economics)

を読むといいと思います.あと,阪大で出たという,動的計画法については

Dynamic Economics: Quantitative Methods and Applications

 

が一番わかりやすいと思います.

  • 統計学・計量経済学

統計学のテキストでは

統計学入門 (基礎統計学)

が決定版でしょう.最初のうちは数学がわからなくても言葉の部分を読んでいくだけでも勉強になります.

私自身は学部時代には計量経済学をほとんど勉強しなかったので参考にならないかと思いますが,
Introduction to Econometrics

Introductory Econometrics: A Modern Approach

 

を呼んでおけば間違いないとは思います(個人的には行列を使ったほうがやりやすいので大学院のテキストを読めばいいんじゃないかと思ってしまいます).

  • 数学

しっかり勉強したい方は

改訂版 経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める

 

を.ひと通りの経済学のトピックも学ぶことができて一石二鳥です.

  • 大学院の勉強

大学院の一年目はコースワークの勉強にほとんどの時間を費やすことになると思います.コースワークの成績は指導教官の選択や留学にも影響を与えるのでその意味で重要です.また論文を読む上での最低限の知識をつけることでもあるので,特に専門の教科についてはちゃんと勉強することをお勧めします(必要以上に勉強する必要はないとは思いますけどね).

  • 数学
  • 勉強の仕方

どの分野に進む場合でも必要なのは集合論,解析,線形代数,最適化あたりでしょう.特に前者2つは基本中の基本と言ってもいいと思います.

うちの大学のコースワークでカバーされる内容のほとんどは以下にも挙げるRudinの”Principles of Mathematical Analysis”でカバーされていましたが,この本は行間がかなり空いていて,しかも定義が標準的なものと少し違ったりするので他のテキストと補完的に使うのが良いと思います.

またどのテキストを読む場合にも言えることですが,時間が豊富にあるのでない限り,授業その他で必要な単元を整理しておき,それに必要な部分を選ぶようにして読んだほうがよいと思います.特に数学書を最初から読もうとするとそれだけで一年が終わってしまいますので要注意です.

基本的に授業の内容に合わせて学ぶ内容を変えるべきでしょうが,学部の時に勉強しておくときなど,特にそういったものがなければさしあたり
集合論の基本(集合の濃度まで)→解析(微分積分あたりまで)→線形代数(固有値のあたりまで)→最適化
の順番で勉強していけばよいと思います.集合論の最初の部分はそもそも数学の基礎ですし,論証の仕方を学ぶのによい練習になります.そして解析学はミクロ経済学などで使う際には証明からちゃんと理解しておく必要があるので,早めに始めておいたほうがよいだろうということによります.

  • テキスト

まず,経済数学のテキストとしては
経済学のための数学入門
経済学・経営学のための数学
の二書が有名です.その内容もさることながら,どういったトピックが必要になるかを知るためにも是非手持ちに入れておきたいテキストです.

まず集合論を学ぶ時には神谷・浦井先生の本の第一章か,または数学書で
集合・位相入門
集合と位相 (数学シリーズ)
をお薦めします.神谷・浦井先生の本は経済学における数学の重要性についても非常によく書かれていますので必読です.松阪は有名な良書ですが,内容が多いので少し大変かもしれません(逆に言えばこれ一冊持っておけば困ることはあまりありません).内田はコンパクトでお薦めです.これら二書は松阪が丁寧,内田が簡潔とスタイルも違うので,実際に読んでみて好みの方を選ぶとよいと思います.
洋書では
Topology: Pearson New International Edition
が(位相の部分も含めて)読みやすいです.

次に解析では
解析入門 (1)
解析入門 (2)
を読むといいかなと思います.すごく難しい本で読むのが辛くなりますが,証明での論理の飛躍が少ないので証明のお手本とするのによいと思います.また同レベルの洋書で先ほども触れた
The Principles of Mathematical Analysis
もお薦めです.こちらは非常にエレガントに書かれているので慣れないうちは少し使いづらいかもしれません.ただ証明が非常にきれいなので一度読んでみるのもよいでしょう.
また解析の問題演習をする際に以上のテキストの問題が難しいと感じるようなら
Economic Dynamics: Theory and Computation
の数学付録の練習問題を解くといいでしょう.こちらの練習問題は確認問題的な簡単なものが多いので最初はいい練習になります.

線形代数についてはあまり多くのテキストを知らないのですが,
線型代数入門
は個人的に好きなテキストです.
また線形空間については後に述べるLuenbergerのテキストでも多少カバーされています.

最適化問題については岡田先生の本が和書の中では読みやすいかなと思います.洋書では
A First Course in Optimization Theory
がよくテキストとして使われています.より発展的に,関数解析の応用として最適化を勉強したいなら
Optimization by Vector Space Methods
を読むのも面白いかもしれません(私も現在少しずつ読み進め中).

  • ミクロ経済学
  • 勉強法

どこまで丁寧にやるかに議論の余地はあるものの,どの分野に行くにせよ個人の意思決定についての内容(MWG6章まで)は必要な内容になるでしょうし,早めに準備をしておくことをお薦めします.
宿題や試験問題で数学的な問題が出やすい傾向があるので,基礎としての解析学をしっかり勉強した上で挑みたい分野でもあります.

  • テキスト

特に好みがなければMWG
Microeconomic Theory
を読んでおきましょう.Chapters 1-6が個人の意思決定で,Chapters 15-20が一般均衡理論を扱っています.大抵の場合これらの内容が最初のマイクロの授業で教えられることになるでしょう(6章はゲームパートになってから教えるところも多いです).
体感として一番難しいのはMWGの3章までの内容で,それ以降は(言ってしまえば)それらの内容を発展させていくだけです.早い段階で3章の勉強を一段落できるかどうかがコースワークを乗りきれるかどうかの鍵になるでしょう.

MWGのやたら数学的な書き方が性に合わないという方は

Microeconomic Analysis
もいいと思います.表面上の難しさ以上の違いは両者にはないように思います.あと,個人的には章立ては第2版の方が好みだったりします.

また最近出たMicroeconomic Foundations I: Choice and Competitive Markets
はMWGと補完的なテキスト(著者も前書きでそう書いてます)で,MWGで省略されている定理の証明なども載っています.また本書の一般均衡の存在証明は必見です(ナッシュ均衡の存在証明を応用しています).

ゲーム理論ではとにかく
Game Theory for Applied Economists
を読んで練習問題を解きましょう.Gibbonsのテキストで足りない部分が出てきた時にのみ,他のより詳しいテキストを参照するというので十分だと思います.

  • マクロ経済学

基本的には動学的な意思決定問題から始めてモデルを組み上げているスタイルになっているので,マイクロの場合とは違い,シンプルなモデルからの直観を大事に積み上げていく勉強が重要になります.

教員によって扱うトピックに違いが出るのは避けられませんが,私自身も全部のトピックについて言えるほど詳しくないので,主にPenn Stateでのコースワークのトピックに準拠したものになると思いますが,ご了承頂けると幸いです.

  • テキスト

大学にある違いはもちろんあるとして,おそらく最初にカバーされるのはRamseyモデルかOverlapping Generationsモデル(OLG)のどちらかでしょう(もしくは導入として二期間モデルの解説が入るかもしれません).どちらもそれほど複雑なモデルではありませんし,古典的なモデルなのでどのテキストを参照しても構わないでしょう.例えば
Introduction To Modern Economic Growth
などは大部ですが必要な部分だけ読めばそれでよく,解説は丁寧です.

モデルを解く上ではラグランジュが使えれば良いのかもしれませんが,おそらく動的計画法(DP)とその数値計算はカバーされるでしょう.
最低限必要なレベルでこのトピックをカバーしているのは
Dynamic Economics: Quantitative Methods and Applications
でしょう.理論だけでなく数値計算やパラメータの推定方法など,バランスよくカバーされています.

もしDPの理論をしっかりカバーしたいorカバーされる授業を受けているなら
Recursive Methods in Economic Dynamics
を読まざるを得ないでしょう.難しいと言われる本書ですが,第4章のDeterministic DPの大事な部分の証明は(長いけれども)難しくはないので時間をかければなんとか読めると思います(Bellmanの最適性原理はsupremumの評価を丁寧にやるだけですし,その後はひたすら縮小写像定理の応用です).
Stochastic DPはどうせ授業で全てをカバーするのは無理でしょうから必要に応じて.

以上のマクロの古典的なモデルと数学準備ができた後で,おそらくカバーされるであろう完備市場のモデルに関しては
Recursive Macroeconomic Theory
の第8章を読むというのが世界標準でしょう.おそらくこれ以外のテキストは必要ないと思います.

Penn Stateのマクロでは他にRBCとNew Keynesian(NK)モデルをカバーしました.RBCに関してはあまりよいテキストを存じませんが,授業でテキスト代わりに使われていたHandbook Chapterの
Chapter 14 Resuscitating real business cycles
はRBCという研究分野のモチベーションやその発展についてまとめています.

NKモデルについては
Monetary Theory and Policy
のテキストが比較的シンプルにまとまっています(最初の章(Money-in-Utilityモデル)を読んだ後にいきなりNKモデルの章から読むことも可能だと思います).
ただ最適金融政策の記述に関しては
Monetary Policy, Inflation, and the Business Cycle: An Introduction to the New Keynesian Framework
の方がよくまとまっていると思うので,こちらも参照するとよいでしょう.こちらの二章で解説されているClassical Dichotomyモデルも勉強してNKモデルと比較すると議論の流れがわかりやすくなります.

マクロはトピックの幅が非常に広いので網羅的に説明することはできませんが,以上のテキストの中で興味のあるトピックについての章を参照していくとよいと思います.またHandbook Chapterも有用です.

  • 統計学・計量経済学
  • 勉強の仕方

統計学では漸近論を学ぶのに必要なトピック(大数の法則や中心極限定理)について解説し,その後計量経済学の各トピックを学ぶことになると思います.
うちのように測度論を授業で扱う大学はまれでしょうし,計量の理論を専門にされる方以外には必要がない内容だと思いますので,測度論のテキストについては割愛します.

私は途中までしか読んでいませんが,B. Hansenの講義ノートが難しすぎず,いいと思います.
http://www.ssc.wisc.edu/~bhansen/econometrics/

書籍としては,まず一年目のテキストとしては
Econometrics
がわかりやすいです.また
Econometric Analysis of Cross Section and Panel Data
は実証をやる人は必見らしいです.最初に漸近論と線形射影の話が出てくるのでとっつきにくいですが,むしろその辺をちゃんとやっておくとコースワークのエコノメは案外楽です(基本的にひたすらcontinuous mapping theoremとdelta methodの応用するだけです).

計量の理論を専門にされる方は測度論,確率論をやり,その後
Asymptotic Statistics
をやるとよいそうな.とりあえずこれを読み,その後はお好みで専門書や論文,Handbook chapterを読むとよいのでしょう.