【過去記事転載】Candidacy Exam(マイクロ編)

ご無沙汰しております.ようやく試験が終わりましたのでコースワークやそれに続くcandidacy exam(今回受けた試験のことです)について書いていこうかと思います.

マイクロのコースワークについては以前に書いた記事がありますので,ここでは試験について書いていきます(マクロについては後日,コースワークの内容と試験対策について書く予定です).

  • Candidacy Examとは

candidacy examとはPh.D. programの学生が実際に論文を書く段階に進む(“Ph.D. candidate”になる)ための必要要件の一つとなる試験のことで,他にpreliminary examやconprehensive examなどとも呼ばれます.主にミクロ経済学,マクロ経済学,計量経済学などの理論科目の試験が課され,合格できれば問題なく進級でき,逆に合格できないと3年目に上がれず,修士号だけもらって修了,という流れになります.

Penn Stateの場合はミクロとマクロの二科目の試験が二年目の夏(二年生に進級する直前)にあり,どちらか一方でも合格できなければ次の試験をその次の年の新年明けに受け,最終的に合格できない科目があれば3年生に進級できない,という感じです.

Penn Stateのcandidacy examの過去問は学部のHPにありますので興味のある方はご覧ください.
Graduate ? Department of Economics

その年度の担当教員によって多少癖がありますが,おおむねコースワークの内容で,授業の期末試験よりも少し難しめの問題が出ます.時間はたっぷりで4問から5問解くのに3時間半の時間が与えられます.

  • 試験対策

マイクロについて,試験対策でやった方がよいと思うことを書いていきます.
(注:試験対策についてはPenn Stateの試験に合わせたものを書きますので,大学によって異なるどころか異なって当たり前です.なので,参考程度に読んでいただけたらと思います)

マイクロではセクションが2つに分かれていて,前半が消費者・生産者理論から一般均衡理論,後半が期待効用理論とゲーム理論からの出題になっています.各セクション3問からなっていて,そのうち各2問を選択する形式です.毎年1問はかなり難しい問題が出るので満遍なく勉強しておくのが無難ですが,その一方自分が得意な分野で苦手な分野を補える可能性もあります(出題範囲が広く,特にゲーム理論で出題を予測しづらいがゆえの配慮でしょうか).

対策については単純明快で,それゆえにわざわざブログの記事として書くのも憚られるのですが,MWGとギボンズを読み込んで練習問題を何度を解くことに尽きます.

特にMWGの第1章から6章までは経済学の全ての基本と言っても過言ではありません.コースワークの期末試験,candidacy exam,そしてその後の研究のいずれの段階であっても,MWGのこの部分は「経済学者になるための教育を受けた人間は当然知っている内容」として扱われます.この部分に関しては大学院に入ることを志したときから本が擦り切れるまで読み,何度も繰り返し問題を解いていくことをおすすめします.厳しいように思われるかもしれませんが,逆に言えばこの部分をしっかり理解できていればコースワークの他のトピック(マイクロ,マクロ問わず)が自然と理解できるようになります.「経済理論の基本」であるこの部分の理解がコースワークを乗り越えられるかを決めるといってもよいと思います.

特に3章は他の章と比べても本文,練習問題ともに難しく,苦労することになると思います.読む時には間接効用関数や支出関数の性質が選好のどの性質から導かれるのかをしっかり理解することが重要だと思います.例えば間接効用関数の準凸性は選好が合理的であることと効用最大化の仮定のみから導くことができ,従って他の選好に関する仮定に依存しない性質です.これは効用理論の持つ非常に強いインプリケーションなのでよく理解することが重要だと思います.

というわけでマイクロの基本,経済主体の分析についてはMWGを読んで練習問題を解く,というのが対策になります.一般均衡の章についても同様ですが,こちらは第1章から第6章までの知識が身に付いていればそれほど苦労することもなく学習できると思います(ちなみに恥ずかしながら私はすべての練習問題は解けていません).厚生経済学の基本定理についてはどちらも自力で証明が書けるようにするほか,これらの定理を一般均衡の問題を解くときに応用できることが重要です.例えば厚生経済学の第二基本定理によって分権的な経済の競争均衡と最適成長モデルの均衡の配分は一致することが示せますが,それによって複雑なモデルの競争均衡を簡単に求めることができるようになります.

私の手元にあるテキストでその点を学習できる問題は載っていなかったのですが,Varianの本の練習問題17.9は幾分か示唆的だと思いますので,ぜひ見ていただけたらと思います.

またブラウワーの不動点定理を使った均衡の存在証明(命題17.C.2)やコアの収束定理(命題18.B.3)は直観がそのまま証明になっているような定理ですので,これらも証明の内容を理解していつでも自分で証明を書けるようになっているとよいと思います.

ゲーム理論パートについても,基本的にはギボンズを読み,練習問題を解くという作業が中心になると思います.第1章が簡単なせいか侮られることの多いギボンズですが,第2章から第4章までは本当に難しく,これらの章にあるモデルを全てテキストと同じレベルで分析できれば1年目には十分すぎるレベルです.是非一度練習問題を解いてみてください.ゲーム理論には他にも有名なテキストがたくさんありますが,こと問題を解くことにおいてギボンズ以上のテキストはほとんどないと思います.それらの本を読むのはギボンズの内容を理解してからでも遅くありません(私は最初はOsborne and Rubinsteinを読んでいたのですが,試験2週間前にこのことに気づいて急いでギボンズを読み直しました.もう少し早く気付けばよかったと今は思っています).

ただオークションについてはギボンズのテキストでは少し足りないので,Vijay Krishnaのオークションのテキストを読むのがよいと思います.基本的なオークションの均衡の求め方が書かれた第2章と,メカニズムデザインを用いて最適オークションを分析する第5章を読めば十分です.

  • Tips

最後に問題を解く上で有用ないくつかの結果について言及しておきます.一般均衡理論では厚生経済学の基本定理の他,不確実性下の一般均衡では金融市場が完備の場合,Radner均衡での均衡配分はArrow-Debreu均衡での配分と一致し,またその状態価格はAD均衡の均衡価格に一致するという結果があります(命題19.D.1).これを使えば完備金融市場の場合に限りRadner均衡の計算を簡単にすることができます.

またゲーム理論では(これは基本的な定理ですが)混合戦略ナッシュ均衡において正の確率で選択される行動はすべて他のプレイヤーの均衡戦略に対する最適反応になっていること(例えばOsborne and Rubinstein, 補題33.2),またある行動が任意の信念に対して最適反応にならないこととある行動によって強支配されることが同値であるという結果(同補題60.1)が混合戦略ナッシュ均衡を計算する際に便利です(微妙な点ですが,ここで言う信念は他のプレイヤーの行動が相関している場合も含みます.信念の定義がテキストによって異なりうるため,3人プレイヤー以上のゲームでは扱いに注意が必要です.2人ゲームの場合にはこの点に気をつける必要はありません.)

特にゲーム理論は問題が複雑になることが多いので問題演習を繰り返して自分の解きやすい方法を見つけ,それに習熟することが重要です(私は完全情報の動学ゲームについては動的計画法を使って解く練習をしました).大変ですが一度身につけてしまえば1年目に出会うどんな問題も恐るるに足りなくなります.コースワークは自分がモデルを分析する上での「得意技」を見つけ,身に付けるよい機会ですので辛いですが頑張っていただけたらと思います.

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